トイレの神様

小3の頃からなぜだか
おばあちゃんと暮らしてた
実家の隣だったけど
おばあちゃんと暮らしてた

毎日お手伝いをして
五目並べもした
でもトイレ掃除だけ苦手な私に
おばあちゃんがこう言った

「トイレには
それはそれはキレイな
女神様がいるんやで
だから毎日キレイにしたら
女神様みたいに
べっぴんさんになれるんやで」

その日から私はトイレを
ピカピカにし始めた
べっぴんさんに絶対なりたくて
毎日磨いてた

買い物に出かけた時には
二人で鴨なんば食べた
新喜劇録画し損ねた
おばあちゃんを
泣いて責めたりもした

「トイレには
それはそれはキレイな
女神様がいるんやで
だから毎日キレイにしたら
女神様みたいに
べっぴんさんになれるんやで」

少し大人になった私は
おばあちゃんとぶつかった
家族ともうまくやれなくて
居場所がなくなった

休みの日も家に帰らず
彼氏と遊んだりした
五目並べも鴨なんばも
二人の間から消えてった

どうしてだろう
人は人を傷つけ
大切なものをなくしてく
いつも味方をしてくれてた
おばあちゃん残して
一人きり 家離れた

上京して2年が過ぎて
おばあちゃんが入院した
痩せて細くなってしまった
おばあちゃんに会いに行った

「おばあちゃん、ただいまー」ってわざと
昔みたいに言ってみたけど
ちょっと話しただけだったのに
「もう帰りー」って
病室を出された

次の日の朝 おばあちゃんは
静かに眠りについた
まるで まるで私が来るのを
待っていてくれたように

ちゃんと育ててくれたのに
恩返しもしてないのに
いい孫じゃなかったのに
こんな私を
待っててくれたんやね

「トイレには
それはそれはキレイな
女神様がいるんやで」
おばあちゃんがくれた言葉は
今日の私を
べっぴんさんにしてくれてるかな

「トイレには
それはそれはキレイな
女神様がいるんやで
だから毎日キレイにしたら
女神様みたいに
べっぴんさんになれるんやで」

気立てのいい
お嫁さんになるのが
夢だった私は
今日もせっせとトイレを
ピカピカにする

おばあちゃん おばあちゃん ありがとう
おばあちゃん ホンマにありがとう

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